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薬局のシンボルの由来と歴史

薬局の店頭で冒頭の画像のような緑十字のマークを見かけたことはありますか。緑十字は薬局のシンボルとして、イギリス、フランス、イタリアの薬局など、欧州を中心に多くの国で使われています。しかしこの緑十字のマークの由来を知っている方は少ないのではないでしょうか。また、各国では様々なシンボルが薬局で用いられているのを知っていますか。
今回は、薬局で用いられるシンボルの由来や歴史についてご紹介します。

19世紀、大陸ヨーロッパの多くの国の薬局では、薬局の目印として店頭に赤十字を掲げていました。十字はキリスト教のシンボルであり、救急や防衛の象徴として、薬局にふさわしいと考えられていたのでしょう。
しかし、1863年に国際赤十字のシンボルとして赤十字が採用されると、国際赤十字以外の団体が赤十字を使用することを禁止する国も現れ、ついに1913年にはジュネーブ条約によって薬局が赤十字を使用することは全くできなくなりました。
こうした流れを受けて、20世紀初頭までには多くのヨーロッパの薬局では緑十字が代わりに使われるようになりました

また、この緑十字には様々なバリエーションが存在しています。

例えば、上のシンボルは大陸ヨーロッパで広く見られるもので、下のシンボルはスイスで使われているものです。

1枚目は蛇と杯、2枚目は蛇と秤が緑十字の上に描かれており、似たモチーフが用いられていることがわかります。
これらは「ヒュギエイアの杯」を表しています。ヒュギエイアはギリシャ神話に登場する女神です。医神として知られるアスクレーピオスの娘であり、「アスクレーピオスの杖」が医学のシンボルとして用いられる一方で、「ヒュギエイアの杯」は薬学のシンボルとして古くから用いられてきました。古くは1796年にパリ薬学会の記念硬貨のモチーフとして用いられた記録もあるようです。

「ヒュギエイアの杯」を用いた薬局シンボルで、緑十字が無いものもあります。ドイツ語圏のドイツやオーストリアでは、蛇と杯のモチーフとともに、Apotheke(薬局)の頭文字「A」を使ったシンボルが用いられています。

緑十字やヒュギエイアの杯がヨーロッパで広く用いられるのに対して、アメリカではこれらよりよく用いられているシンボルがあります。それは「乳鉢と乳棒」です。
乳鉢と乳棒は薬を調合するのに伝統的に使われており、視覚的にわかりやすいことが使われるようになったと考えられます。
19世紀にはこのシンボルがアメリカで広く使われていましたが、現在はかつてほどは使われてはいないようです。しかし、緑十字はアメリカでは救急のシンボルとして使われているため薬局ではあまり使われておらず、乳鉢と乳棒のほうが薬局のシンボルとして認知されているようです。

薬局のシンボルには、キリスト教由来の十字架や、ギリシャ神話のモチーフ、古くから使われてきた道具など、文化や歴史を感じさせる由来がありました。薬局を訪れる際には、ぜひそこにあるシンボルやマークにも注目してみてください。

参考
Griffenhagen, G. (1990). “Signs and Signboards of the Pharmacy.” Pharmacy in History, 32(1), 12-21.
PharmaKon「Pharmaceutical symbols around the world」
https://pharmakondotme.wordpress.com/2012/04/30/pharmaceutical-symbols-around-the-world/
IGIHE「The Meaning behind Pharmacy symbols」
http://en.igihe.com/health/the-meaning-behind-pharmacy-symbols.html
Wellcome Collection「The origins and meanings of pharmacy symbols」
https://wellcomecollection.org/articles/We9Wqx4AAA5amD91