在宅医療で薬剤師の臨床力をより発揮させるには ~チーム医療の現場から~

今回、在宅現場の第一線で働きながら、勉強会の主宰、大学の非常勤講師なども務める三谷徳昭先生にお話をうかがいました。10年前から在宅業務に本気で取り組み、今やプロフェッショナルとして後輩指導にも熱心に取り組む先生の原点と、個人在宅と施設在宅の違いについて詳しく聞いてみました。

 

薬剤師 三谷徳昭(みつや のりあき)さん

パル薬局菅生店 在宅部長
慶応義塾大学・昭和薬科大学 非常勤講師

経歴:
2000年に北里大学薬学部を卒業後、チェーンドラッグストアにて予防医療から在宅医療と幅広く経験。2014年に転職し、現在は川崎市宮前区で薬剤師として勤務する傍ら、減薬の学会発表や講演などを行う。パル・コーポレーション在宅部長。在宅医療において薬剤師の価値を高める医療改革を目指し、2017年に一般社団法人 ミライ☆在宅委員会を設立。当初から委員長を務め、毎月現場の薬剤師や多職種を集めて勉強会を開催している。

資格など:
日本薬剤師研修センター認定薬剤師
高齢者薬物治療認定薬剤師

発表論文:
三谷徳昭, 他. 施設入所者の処方減薬の取り組みと実績. 癌と化学療法. 2018;45巻:p.39-40.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29650870/

 

 

目標となる先輩がいない中、自分なりに奮闘したからこそ今がある

――ご経歴からも、在宅に力を入れていることが伝わりますが、その原点はどこにあるのでしょうか。

僕が初めて在宅に本格的に取り組んだのは、まだ前職にいた10年前です。とある店舗で在宅訪問サービスの立ち上げを任されたのですが、これから本気でやるぞという時に先を行く師匠のような先輩に出会えず、自分でやるしかなかったんです。

当時はまだ薬剤師への理解が浅く、患者さんの情報を集めるところから苦難しました。それでも在宅の現場では、専門的な薬学知識を持っていない他職種ともやり取りをしなければなりません。多疾病併存の高齢者の場合、医師がすべてのガイドラインを把握することは難しく、標準治療から外れた医薬品選択が行われていることがありました。そこで、薬剤師がガイドラインなどに準じた薬の提案が出来れば、そんな現状を変えられるんじゃないかと考えました。今思えば、この辺りが始まりだったのかなと思います。

在宅で必要な知識の中には、薬の規格や種類を知っているだけでも、適正使用につなげることができるものもあります。ただ、さまざまな診療科の薬が混在しているので、医師などの他職種と対等にやり取りするためには、幅広い医薬品の薬物治療の知識を知っておく必要があります。僕の場合、いくつかの面薬局での経験が活き、その点での苦労はさほどでもありませんでしたが、在宅領域について本格的に勉強するようになったのは転職した6年前からです。人生変わっちゃったって感じです(笑)。
 

忙しさは理由にならない! 施設在宅にチームで取り組むメリットと始め方

――普段、在宅でとくに意識していることはありますか?

薬剤師と、往診する医師や施設の看護師、介護士、ケアマネなどのスタッフは、全員で1つのチームだということですね。本来であれば、薬剤師が配薬した後、実際に患者さんがどう飲んだのか、その後どう変わったのかをチーム内で共有できるのが理想です。

僕は、残薬を見つけたら処方を調節してもらうだけでなく、看護師に残薬の理由を聞いたり、次から残薬が生じない工夫があるか相談したりしています。こうして、患者さんと関わるチームの一員として常に考えているからこそ、他職種に追加業務をお願いすることもあるので、その分他職種からの依頼にもしっかりと応えます。こういう相互関係が当たり前になると、仕事が楽しくなりますよ。

良い連携は、過誤を防ぐためにも重要です。例えば、配薬時に薬剤師がチェックして終わりではなく、実際に患者さんに薬を渡す看護師などにも、服薬前の最終チェックをお願いしておくと、飲む前に気付くことができるかもしれません。また、万が一ミスが発覚したとしても、お互いに対策を考え、チーム全体でミスを防ぐことができるようになります。これは、チームとしてやる上で大きなメリットだと思います。


――他職種との連携を深めるためには、まず何をすればよいのでしょうか。

少し話す時間がとれそうな時、他職種のスタッフに質問してみるといいですよ。例えば、「認知の周辺症状は大丈夫ですか?」「●●さんの介護、大変じゃないですか?」など。なんでもいいから話し掛けてみて、聞いた内容から医師への報告書を作るだけでも連携になります。最初は話を聞くことから始めて、だんだんと薬剤師の考えを伝えていけたらいいのかなと。

そこから患者さんのケアに関する改善点が見つかったらいいですよね。ただ、そもそも薬剤師がこういう働きかけに踏み切るタイミングが掴めていなかったり、そこまで大切なことだと思っていなかったり…。薬学的な介入で達成感を得た経験がなく、薬剤師の行動が患者さんにとってプラスに働くイメージができていない人が多いのかもしれません。

時間がないなどを理由に、配薬後の管理を施設に任せるのは容易ですが、こうして連携が分断されるとかえって薬局への要求が増え、業務が圧迫されかねません。これが原因で、薬剤師が本当にやりたいことができなくなってしまうと本末転倒なので、「調剤以外もできるんだぞ」というところを他職種にどんどん見せてほしいですね。

個人在宅と施設在宅は別物!?薬剤師が臨床力を発揮できる現場とは

――大学で非常勤講師をされていますが、教育現場で気付いたことはありますか?

授業などで教わる在宅は、“お薬カレンダーに薬をセットして、気になることがあればバイタルを測って報告書を書く”など、個人在宅のイメージに偏っているかもしれないということです。というのも僕は、見方によって、個人在宅と施設在宅はまったくの別物だと考えているからです。

個人在宅は、患者さんと患者さんに関わるスタッフとのコミュニケーションがメインですが、施設在宅は、往診同行をしながら医師・看護師と一緒に処方やケアを考えていくので、検査値などの解釈を共有しやすく、薬剤師が臨床力を発揮するにはもってこいの場です。1人の患者さんに減薬などの変更を適応できたら、ほかの患者さんに応用しやすいなどの利点もあります。施設自体が1つの病棟のようなイメージですね。

最近は、個人在宅と施設在宅の実際を学生に伝えるために、訪問・往診同行などの様子を撮った動画を大学で見てもらっています。チーム医療の雰囲気がよく出ている場面に、「在宅の印象が変わった」などの感想がたくさん寄せられたのが印象的でした。
 

インプット・アウトプット共に充実! 勉強会が目指すのは、成長と希望の場

――在宅現場での薬剤師の役割や将来性が、もっと浸透していくと良いですね。ところで、三谷さんが委員長を務める「ミライ☆在宅委員会」はどんな活動をしているのですか?

ミライ☆在宅委員会は、6年ほど前に運営を始めました。2017年に一般社団法人を設立し、薬剤師研修センター認定シールの発行をしています。活動としては、月1回の勉強会がメインで、毎年の学会発表にも取り組んでいます。メンバーの中には初めて学会発表をする人もいるので、委員会として全面的にサポートをしており、これまでに22演題ほど出しています。

今まで、日本在宅薬学会など在宅系の学会はほぼ網羅し、他にも数えきれないほどの学会に参加しました。最近は立ち返り、在宅系の学会に注力しています。薬物治療は患者さんにさまざまな影響を与えるので、その分、関わりが必要な職種も多いです。今後は、看護やリハビリなど、他職種の学会でも発表していきたいと考えています。

 

 

また、勉強会では委員会のメンバーにも講演をしてもらっています。薬剤師は皆、それぞれが自分なりに勉強していると思いますが、アウトプットで知識の定着を図ることや、後輩を育てることも重要です。このように、ミライ☆在宅委員会では、インプットとアウトプットを両立できる場を提供し、薬剤師として幅広く成長できる環境を整えることも目標としています。

最近は学生会員が増えているので、この勢いで若手薬剤師を盛り上げて、引っ張っていきたいという野望もあります。これから活躍していく若手薬剤師や薬学生が希望を持てるような道を、皆で一緒に作っていきたいですね。

 

まとめ
三谷先生のすごいところは、自らで道を切り拓いただけでなく、それらで得たノウハウを勉強会で惜しみなくシェアしているところです。(これをきっかけに、私もミライ☆在宅委員会のメンバーになりました!)個人在宅と施設在宅を別物として捉える視点は目からうろこでした。今後、施設との連携をどうするかで、その薬局の真価が問われるようにも思えました。薬局薬剤師も、他職種との関わりを大事にしていきたいですね。《薬剤師・編集者 堀間莉穂》

 

 

 

パル薬局菅生店
店舗所在地:〒216-0015 神奈川県川崎市宮前区菅生4-1-28
営業時間:9時~18時
従業員数:4人
主な応需科目:総合内科、耳鼻科、皮膚科 
調剤以外のサービス:在宅訪問
会社名:有限会社パル・コーポレーション
本社所在地:川崎市宮前区平2-11-3
設立年:1980年
主な事業:調剤、販売
ホームページ:http://www.pal-kusuri.com/


一般社団法人 ミライ☆在宅委員会
設立年:2017年
理念:薬のスペシャリストである薬剤師が医療ジェネラリストとして進化することにより、医療資源の効率化に貢献すること
主な活動:勉強会、学会発表
ホームページ:https://sites.google.com/view/miraizaitakuassociationtop/

 

 

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この記事を書いた人

ユーザー pharmacist-horima の写真
365日開局の薬局薬剤師を経て、現在は編集者のかたわらでライターをしている。薬薬連携、多職種連携などに興味を持ち、メディア運営も担う。趣味はフルート演奏、ボードゲームなど。最近はあつまれどうぶつの森に時間を溶かされている。

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