薬剤師が志高く働き続けるには? 医師からの信頼と学びの発信が処方提案の入口に

「薬剤師として誇りを持てる仕事は、病院でも薬局でもできる」と語る、鈴木邦彦先生。インタビュー前半『理想のキャリアは病院?薬局?それとも…?「訪問薬剤師」という新たな選択肢 ~つなぐ薬局柏~』では、病院と薬局双方の視点から、キャリアについての話をメインにうかがいました。
膨大な知識と経験をベースに、患者さんのための薬物治療を考える一貫した姿勢は周囲の人々を惹きつけ、薬剤師だけでなく医師からの信頼も厚い存在。そんな鈴木先生に、医師とスムーズにやりとりするコツや、高いモチベーションを保ち続ける秘訣について、教えてもらいました。
 

 

 

薬剤師 鈴木邦彦(スズキ クニヒコ)さん
千葉県柏市の在宅医療特化型薬局「つなぐ薬局」に勤務。2006年に第一薬科大学を卒業。08年共立薬科大学大学院医療薬学コース修士課程修了。病院薬剤師として7年勤務したのち、保険薬局業務へ転職。その後、在宅医療により力を入れたいと現職つなぐ薬局に転職。現在、施設往診同行や個人在宅訪問などで積極的に医師とコミュニケーションを行い、処方提案へとつなげている。CareNet.comにて「うまくいく!処方提案プラクティス」を連載中。

《資格》
日本薬剤師研修センター認定薬剤師
実務実習指導薬剤師

医師との信頼関係を築くには、患者さんのことを一緒に考えるところから

疑義照会や処方提案など、医師に対して、始めから上手くやり取りするのはなかなか難しいと思います。スムーズなやり取りをするためには、まず前提として、医師との信頼関係を構築することが大切です。最初は症例検討会など、門前の先生の診療方針を垣間見れる場面に行ってみるとよいでしょう。そうやって直接話ができる機会を何度か設けて、先生の思考を追っていくと、処方について、先生の考えあっての内容なのか、それとも抜けやミスなのか、判断しやすくなると思います。とくに最新情報がどんどん入ってくる領域ではこういう積み重ねがとても重要です。

それが難しい場合は、製薬メーカー主催の勉強会を病院と合同でやるのがよいと思います。「勉強会をするときは呼んでください」と、病院に事前に伝えておくんです。その場で薬剤師から積極的に質問をすると、他職種に薬剤師の視点を伝えやすくなりますよ。医師たちは意外とそういうところを見ています。とにかく一緒に患者さんのことを考える機会を作ることが、基盤になるのではないかと思います。

あとは、「先生、ここがわからないので教えてください」、「この患者さんについて相談させてください」などと、素直に質問してみるのも手です。医師は、こちらからの指摘に対しては厳しい人もいますが、質問や相談には親切に対応してくれることが多いです。最初は教わるゾーンからスタートして、だんだん意見を出せるようになってきたら、少し突っ込んだ質問をしていきます。このように、徐々にステップアップしていくことがうまくやり取りを続けるコツです。

同じ志を持つ仲間を見つけて、自分らしい自分磨きを

働き始めてからモチベーションを保つ方法としては、自分のいる会社や組織で、自分と似た考えを持っている先輩や同期を見つけて、一緒に勉強を始めることですね。難しい環境もあるかもしれないですが、そこであきらめるのではなく、学会、勉強会、研修会などに参加して、自分のモチベーションを維持できる場を探しましょう。

僕の場合は、ジェネラリスト薬剤師の育成を目指す「ミライ☆在宅委員会」がそういう場です。月に1回開催される勉強会に参加するようになってから、志の高い薬剤師がこんなにいたのかと驚かされました。ひとつでなくてもいいので、自分の場を見つけ、それを失わないことが大事です。

これからは、自分らしくいながら、自分磨きを怠らないことが生き残る方法かもしれません。どんなに志が高くても、仲間がいないと孤独になってしまいます。薬剤師になってからも、自分が将来どんなことをやりたいか、夢を抱き続けるのは大事です。そんな心を通わせられる仲間を見つけられるとベストですね。

志が高い人のところには、自然とそういう人が集まります。だから、一人見つけると、その近くに似た気持ちの人がたくさんいる可能性が高いですよ。同じように、発信力のある人間の周りには必ずそういう人がいます。自分の伝えたいことを自分の言葉で伝えられる人たちと関わるのも、非常によい刺激になります。

実際の現場で使う場面を想定した勉強を始めよう

薬剤師は真面目な人が多くて、いろいろな本を読んだり、勉強会に参加したり、インプットに一生懸命になりがちですが、その後アウトプットする場や機会を想定して勉強したほうがいいですよ。優先順位としては、まず自分が一番関わる分野の割合を増やすことです。実践で使わない領域は、その場ではわかった気になっても、時間と共に記憶が薄れてしまってもったいないので。勉強会で得られた“気付き”が、今の自分の現場にどう使えるのかを考えることが大切です。

処方提案や症例検討も、いろいろな領域について学ぶのはおもしろいですが、時と場合によって目的が違えば意味も異なってくるので、注意が必要です。勉強するなら、自分のよく出会う疾患、よく出る薬、よく聞かれる質問などについて極めることから始めましょう。

添付文書だけでは、患者さんの訴えが副作用なのかどうか判断できない

僕は今、「臨床推論」にとても重きを置いています。例えば、患者さんが「薬を飲み始めてから頭痛がします」と訴えた時、頭痛の原因はものすごくたくさんありますが、薬剤師もそれを考えないといけないんですよね。薬についてだけでなく、臨床を知るための学問もとても大事です。薬のことを理解した次のステップとして、症候学などを学び、頭痛の原因について総合的に考えられるようになって初めて、薬の副作用の可能性にたどりつくと思います。

患者さんが何か症状を訴えたとき、添付文書とにらめっこするのではなく、「症状を自覚した時期」「症状が現れる時間帯」「悪化するタイミング」などを聞いていくと、答えに近付けることもありますよ。  まだこういうことができる薬剤師は少ないですが、地道な情報発信を続けて、「こんなこともできるよね」と可能性を伝えていかないと、あとに続こうと思ってくれる人が増えないんです。薬剤師が職能をフルに発揮できない環境に居続けるのは、すごくもったいないですよ。薬剤師の問題解決能力は絶対に患者さんの役に立つし、そのためにたくさん勉強しているんでしょう。

 調剤を完璧にできたって、患者さんの問題は解決できません。だからどうすればいいのかをもっと考えて、今後変えていかなきゃいけないところですよね。頑張りましょう!

 

まとめ
鈴木先生のお話から、一人で頑張るだけではなく、一緒に頑張る仲間を見つけることも大切だと気付かされました。この記事が、誰かの頑張るきっかけになったらうれしいです。鈴木先生、今回は貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました!

 

参考:ミライ☆在宅委員会 https://sites.google.com/view/miraizaitakuassociationtop/
インタビュー前半:理想のキャリアは病院?薬局?それとも…?「訪問薬剤師」という新たな選択肢 ~つなぐ薬局柏~

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この記事を書いた人

ユーザー pharmacist-horima の写真
365日開局の薬局薬剤師を経て、現在は編集者のかたわらでライターをしている。薬薬連携、多職種連携などに興味を持ち、メディア運営も担う。趣味はフルート演奏、ボードゲームなど。最近はあつまれどうぶつの森に時間を溶かされている。

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