ポリファーマシー対策に薬剤師の力が期待されている ~病院薬剤師の役割と介入方法~

ポリファーマシーは「poly(多く)+pharmacy(薬・調剤)」と書きますが、単に多剤併用のことをいうのではなく、多くの薬によって有害事象が生じている状態をいいます。ポリファーマシーという言葉の背景にはいくつもの問題点が隠されています。そこで薬剤師の腕の見せ所です!今までポリファーマシー問題を敬遠していた薬剤師にとって、一歩踏み出すきっかけになるように、経験をもとに病院薬剤師としてのポリファーマシー介入方法をご紹介します。

 

点数化されている=やるべき仕事

まず、薬剤総合評価調整加算をご存じですか?これは、ポリファーマシーに密に関連している加算項目なのです。要は入院前に6種類以上内服していた患者の処方内容を入院中に検討し、入院前より2種類以上減薬できると250点算定することができます。

これは2016年度診療報酬改定時に新設されたものですが、今回の2020年度診療報酬改定でさらに見直されました。
 

(1)薬剤総合評価調整加算  250点→100点
(2)薬剤調整加算       150点(新設)
(3)退院時薬剤情報連携加算  60点(新設)
  (それぞれ退院時1回に限り算定できる。)


もともとの2016年度から始まった薬剤総合評価調整加算が今回の改定では、細かな要件はあるものの、患者の処方内容を評価した上で、処方内容の変更と指導を行うことで算定できる(1)と、退院時に2種類以上減薬できた場合の算定できる(2)に分けられたことになります。

ここで2つに分けたのには、ただ2種類以上減薬するのが目標ではなく、そこまでのプロセスである処方内容の評価や調整そのものを評価の対象にしたいという意図があるようです。
しかしながら、処方変更に関しての情報がなければ、元のかかりつけ医によって処方が戻ってしまうことは少なくありません。特に急性期は入院期間が短いため、退院後のフォローが必須となってきます。

そこで、入院前の処方の変更や中止になった経緯を文書で情報提供した際に算定できる(3)が今回の改定で新設されています。
このように、入院前からの処方内容を検討し、変更した場合は退院後のフォローにまでつなげる一連の業務が点数化されているということは、ポリファーマシー対策に薬剤師の技量が期待されているということなのです。

ポリファーマシーに陥るのはなぜか?

ポリファーマシーという言葉の背景には、減薬だけでは根本的な解決にはならないいくつもの問題点が隠されており、ポリファーマシーの原因として以下のような点が挙げられます。

~ポリファーマシーの原因~

  • 疾患数が多い、不定愁訴が多い
  • 薬の管理ができていない(危機管理や認知機能の低下)
  • お薬手帳を活用していない(同効薬重複・医療機関連携不足)
  • 処方カスケード(医師が副作用や有害事象を疑わない)
  • 加齢による生理機能の変化における薬物動態の変化(副作用が出現しやすい)

特に高齢になるほど疾患は増え、複数の診療科を受診するため、薬が増えていく傾向にあります。お薬手帳を持っていても、病院ごとに冊子を分けていたり、忘れる度に薬局で発行してもらうため何冊も持っていたりと、有効活用されていないことが多いです。また、医師が副作用と気づかず、患者の訴えのまま薬を処方し、それを繰り返して薬が増えるだけではなく、症状を重症化させてしまう処方カスケードも原因として少なくありません。

実際に私が行っていた薬剤師の介入方法

患者のスクリーニングは、まず薬剤師が、入院時の持参薬の鑑別をして、薬の数や、処方内容の理解度、管理方法等を総合的にみて問題点を抽出することから始まります。また、それ以外に医師や看護師から介入依頼をうけることもあります。

1、患者の背景を確認

まず情報収集が要となってきます。入院してきた時点で、内服内容や、処方元、処方理由、薬の管理方法を確認していきます。持参薬から収集できる情報は限られているため、本人・家族・他スタッフ・処方元医療機関への聴収(カンファレンス)が必須となり、それをもとに内服している薬の情報や、管理状況を整理していきます。
また、この時点で患者や家族の処方変更に関しての希望や薬に関しての悩みを傾聴しておくと、処方内容を評価する上で参考になります。

2、処方内容や管理方法の検討

集めた情報をもとに、薬剤師の観点から変更点の抽出、不要薬剤の選定、不足薬剤の検討、管理方法の妥当性を検討し、今後の服薬アドヒアランス向上につなげられるよう薬の整理を行います。

3、検討結果を提案 

整理した処方内容を変更理由とともに医師に処方提案し、相談した上で処方変更を検討してもらいます。管理方法について検討事項があれば、病棟のカンファレンスにて問題を共有し、他のスタッフと一緒に解決できるよう考えていきます。また、薬剤の包装の開封ができない患者がいれば、直接リハビリテーション科のスタッフに相談し、その患者にあった手技で開封できるように、入院中に練習してもらうこともあります。

4、本人・家族へ提案

医療スタッフで話合った結果(処方内容や管理方法)を本人や家族が納得されるまで指導・説明し、もし要望があれば、医師へ情報をフィードバックし、再度必要事項を検討します。

5、退院まで観察

退院まで残された入院期間を、薬の管理状況や処方薬剤に問題点がないかを確認する期間にあて、本人も不安がない状態で退院してもらいます。

6、退院後のフォロー

転院や施設への退院の場合は、薬剤師が「お薬の情報提供書」として、入院中の処方変更の経緯や、最終処方内容を記載して文書でお渡しします。自宅への退院の場合、情報提供書だけではなく、お薬手帳にもかかりつけ医師や薬剤師にお知らせしておきたいことや、指導を再度行って欲しい項目を書かせてもらいました。

ポリファーマシーを繰り返さないために

病院で実際に介入して感じたことは、お薬をきちんと管理できていないと入退院を繰り返す傾向があるということです。再入院を減らすためにも、管理者を明確にするために、入院中の薬剤師におけるポリファーマシー介入は必須となります。特に高齢の患者は主訴を伝えるので精いっぱいです。退院後のかかりつけ薬剤師を見つけるためにも、病院の外の医療機関との連携が大事になってきますので、その連携システムの構築も急いで行わなければならないところです。
診療科が少ない病院ではなかなか大幅な減薬には取り組みにくいかもしれませんが、診療科にとらわれない薬の知識を持ち合わせている薬剤師が主導となり、1剤からでもいいので、処方を評価してみてください。

 

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この記事を書いた人

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病院薬剤師や派遣薬剤師を経て現在はメディカルライターをしている。シッ○スパッドをしながら執筆するのが習慣。趣味はスマホでTV番組を見ながら寝ること。さまぁ~ずさんとバナナマンさんの声聴きながら寝るのが至福の時。

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